成長痛がないと身長は伸びないの?骨と筋肉が作り出す成長痛の原因とその種類
身長が伸びる成長期の子供についてよく耳にする言葉に「成長痛」があります。一般的に成長痛とは、寝ている間に骨がグングンと伸びるため、その骨の成長速度にまわりの筋肉などの成長速度がついていけず、不具合が生じて痛みが生じる――というような解釈をされており、あまり「病気・疾患」というイメージでは捉えられていません。

そこで中には「成長痛は骨が伸びている証拠。つまり成長痛がないと、身長は伸びないってことでは?」と、不安に思う成長期の子供もいるようです。
しかし実際のところ、成長痛とはどのような現象なのでしょうか。また成長痛がなければ身長が伸びない、ということはあるのでしょうか。
年齢によって原因が異なる成長痛
成長痛には2種類あります。ひとつ目は幼児から小学校低学年の「低年齢」に起こる成長痛であり、2つ目は小学校高学年以上の成長期に起こる「10代」の成長痛です。
低学年の場合、多くが夜に下半身(太ももから下全体。特に足の甲や膝部分)に30分程度の痛みを訴えます。
このような低年齢での成長痛の場合、「身長が伸びている証拠」とは言えません。たしかに低学年の年頃であっても、身長は1年で平均5cm程度伸びています。※5~6歳児の平均成長率:約6cm
しかし低年齢の子供の場合、身体が柔らかいために「筋肉が骨の成長についていけない」ということはなく、身長の伸びが痛みとなって表れるということは考えられないのです。
ではなぜ幼児が足の痛みを訴えるかと言うと、これには「精神的不安」が深く関わっているのでは、と推測されています。
保育園・幼稚園や小学校入学など、社会的な環境変化などにより、低年齢であろうとも子供がストレスを感じていることは多くあります。その不安が一日の終わりである夜に身体的な痛み(子供本人は痛みを実際に感じている)となるのです。
この場合は親・保護者が足をさすってあげたり、抱っこをしてあげるなどして愛情を示し、安心感を子供に与えることが解決策になると言われています。
ただし日中においても痛みを訴える場合や、あまりに痛みがひどく長く続く場合は、なんらかの身体的疾患の可能性が高いため、小児科医にご相談ください。
オスグット病って何?
では10代の成長期に感じる成長痛は、骨が急速に伸びる弊害であり、身長が伸びている証拠なのでしょうか。
実はこの時期の成長痛にも様々な原因や説があり、安易に「身長が伸びているから痛くてもしょうがない」「成長痛がないと身長が伸びない」とは断定できません。というのも、単純に骨が伸びているためではなく、疾患としての成長痛もいくつか存在するからです。
いわゆる「10代の成長痛」の原因として有名な疾患に「オスグット病」が挙げられます。「オスグット病」の正式名称は「オスグット・シュラッター症候群」と呼び、概ね10代前半から15歳程度のスポーツを頻繁に行う子供に発症します。
「成長痛になると膝がきしんで痛い」ということがよく起きますが、もしもその原因が「オスグット病」ならば、それは「身長が伸びている証拠」というよりも、「膝の下部にあたるお皿部分」である「脛骨粗面」が膨張し、前に押し出されてしまっているのです。
成長痛ではなくスポーツ障害
ではなぜ脛骨粗面が膨張してしまうのでしょうか。その大元の原因には太ももの筋肉が硬くなっていることが挙げられます。

■Quadriceps tendon:大腿四頭筋腱 ■Patella:膝蓋骨 ■Patellar tendon:膝蓋腱
より詳細に説明すると、大腿四頭筋(「大腿直筋」「外側広筋」「中間広筋」「内側広筋」の総称。太ももの前面の筋肉)は膝の骨である膝蓋骨(しつがいこつ。いわゆる「膝のお皿」)とつながっています。そして膝を伸縮させる力を働かせます。
そのため、膝を繰り返し過度に伸縮させていると、硬くなっている大腿四頭筋が膝蓋骨の下の方にある「膝蓋腱」が脛骨に付着している部分を無理に引っ張ることになるため、その付着部である軟骨部分を剥離させてしまうのです。
大人の硬い骨とは異なり、成長期の骨は軟膏が残っており、過度な負荷がかかると損傷を負いやすいと言えます。そのためこの「オスグット病」は成長期の子供の膝に起こりやすく、大人になるほどに起こりにくくなるのです。
激しいスポーツをよく行い、下半身への負荷が大きいと把握している上で膝周辺に痛みがある場合は、単に「身長が伸びている成長痛」とは捉えず、スポーツ障害として整骨院など専門医を受診するようにしましょう。
成長痛がないと身長は伸びない?
では、成長痛と言われるような、「骨の成長に伴う足の痛み」はなく、「成長痛がないから身長が伸びない」ということはないのでしょうか。
実は、やはり「骨の成長に周りの筋肉がついていけず、痛みが発症される」ということはありえます。その原因は骨の伸び率と比較して、あまリ伸び率が良くない筋肉が硬くなってしまうことで、骨が圧迫されてしまうからです。
※骨が成長した後に、筋肉が成長するため。

そこでこのような成長痛への対処法として、筋肉を伸ばすストレッチが有効です。もしも成長痛があるにも関わらず放置しておけば、筋肉はますます硬くなってしまい、将来身体の各部位で不具合が生じる可能性が高くなるからです。
「成長痛を感じないから身長が伸びない」ということは全くありません。しかし「成長痛があるのに何も対処しない」のは、将来のケガや病気の元になるかもしれません。そのため、身長を健康的に伸ばすためにも、適度なストレッチで筋肉に柔軟性を与えることにも気を配りましょう。